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栗棟美里 制作

竣工:2019年6月1日

​場所:京都市左京区

コンセプト・テーマ:現代風の和

金山邸は、室町幕府8代将軍・足利義政が建立した”銀閣寺”にほど近い場所にある。

足利義政といえば、連歌・能・立花といった”東山文化”を築いた文化人であり、 また銀閣寺の東求堂同仁斎(とうぐどうどうじんさい)は、”書院造り”という茶室の代表的な例とされている。

 

金山氏から”現代風の和”というテーマを頂いた時、”和”から連想したのは”茶室”だった。

家屋の立地や茶の湯について調べていくにつれ、先の書院茶が”茶”に限らず唐物の美しさも楽しむスタイル(”完璧な美”を追求したとされる)と知り、「茶室の壁を自身の作品で飾るのも良い」と思い、当時建具で仕切られていたスペースを茶室風に設る事にした。

 

“茶室”は書院茶の後、”アンバランスで不完全なもの/形にこそ新しい美がある”という”侘び(侘び茶)”へとシフトしていったのだけれども、その”侘び”に関しては私の作品(枯れゆく花の写真と金継ぎを施したミクストメディア)で表現したいと思った。

そして象徴的で美しい三角屋根の壁。そこにもやはり”和”の要素を盛り込むべく、銀閣寺の”火灯窓(花頭窓)”に着想を得て、格子越しの世界を映像で表現した。そこにはかつて夏目漱石が愛の言葉を「月が綺麗ですね」と訳したように、窓越しの月の記憶を情緒ある時間として再現する。

 

上記の”和”の要素が揃った時、改めて”現代”について思いを馳せる。

”現代美術”がそれを指しているとも言えるが、人そのもののあり方や思考こそ”現代”であると広義に捉えたい。

現代を生きる、私自身を含めた多くの人々の無意識下には”モダニズム”が息を潜めているように感じる。形は機能に、機能は形に従うよう定められた規律ある思想とフォルムを私は愛しているけれど、一方でもっと無骨で抑制の効かない生きた感情や生命力を作品と制作において求めている。

とても効率的で洗練されたシステムの中で生身の身体が生きる実感を求めるように。

 

空間を訪れた人々が持つモダニズムの意識下に現代美術(自身の作品)が息づいた時、そこに”現代風の和”が成立するのかもしれない…金山氏が私に今回のご依頼を下さった理由が、制作を通して少し見えたような気がした。

「空間・人・現代美術」が揃いはじめて実現する情緒ある時間を、お楽しみいただければ幸いです。

作品詳細

1.

Memorise/moon

2019

Single channel video / Full HD video | 17min36sec / Size variable

「窓越しの月の記憶」をテーマに制作したイメージを透明フィルムにプリント、その上に氷を重ね、溶けていく様子を撮影する。

氷が溶け像は次第に浮かび上がるが、同時に水で溶解し崩れていく。

三角屋根の壁を現代風の火灯窓に見立て、月に想いを馳せる情緒ある記憶と時間を表現する。

2.

Condolence

2019

Photography / latex print on fabric| 128×350cm

枯れ行く草花を撮影し、織物壁紙にプリント。

限られた時間や存在/生命の尊さと、その美しさを表現する。

3.

Crushed/clock#2

2019

Mixed media / ink-jet print, opaque ink, gold | 30×30cm

時計の割れたガラスをつなぎ合わせ、撮影・プリント。ひび割れの上から作者独自の手法で金継ぎを施したミクストメディア。

無機的な工業製品は制作工程を経て、唯一無二の有機的な存在として捉えなおされる。